幸せへのキセキ(原題:We Bought a Zoo) のレビュー(評論、批評、見解、感想)

Review by Darcon

 

この映画は最初からかなり早いペースで進む。
マット・デイモン演ずる父親ベンジャミン・ミーは、子供達を学校に連れて行こうとしている場面で紹介され、子供のひとりに手をやいていることがわかる。その息子が全てに対して不機嫌で学校で問題を起すばかり。
ベンジャミンの妻は既に亡くなっており、新しく家族揃ってやり直すため新居を探した結果荒れ荒んだ動物園にたどり着く事になる。

将来きっとふたたび彼女の名を耳にするだろうから、娘のロージー役の女の子を覚えておいて欲しい。
マギー・エリザベス・ジョーンズ、名前の方がこの子より大きいみたいだ。
彼女が出てくるシーンはすべて彼女に注目してしまって他の俳優が目に入らない。最も笑えるシーンも彼女がいるからである。

脚本はスマートであり、おかしさにも満ちて、ほとんどがリアルに感じられる。本当に存在する家族が実際に起こっている問題に対処していると感じられるからだ。
動物園を買うという奇抜さもこの家族ならではと信じてしまう。
勿論、実話をもとにしているから当たり前と言えばそうなる。実際はイギリスでの話を映画ではアメリカ・カリフォルニア州の風を吹き込んでいる。

© 2011 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

キャメロン・クロウ監督はどうも意味深のクローズアップを長く映すのが好きらしい。
まざまざと見せられたデイモンの鼻の上にあるイボをどうにかして欲しいと思ってしまう。
言うまでもなく、スカーレット・ヨハンソンのクローズアップなら問題はない。しかし彼女の普段の力強さや若さ溢れるセクシーさはかなりトーンダウンしている。
クロウ監督がセクシーさを無くさせているのだろうけど、それ無しでは彼女の演技もどこかふぬけた感じだ。キャラクターがひねり出すのがたったひとつのキスくらいじゃ、ねえ。

デイモンは何かをぶつけている時がベストだ。彼が最小限の演技をする時が彼のよさを発揮し、映画をもよくする。
木製の樽を怒って蹴りつけるけど再び元に戻しているシーン等は己を保つ事ができる事を意味しているのだろうか。何にしてもデイモンの演技はうまい。
心に残るいくつものマジカルなシーンがある。
息子に対してメルトダウン、死を待つのみのトラとの会話、そして何より素晴らしいのは、メガネに反射する亡き妻のダンスシーン、そして妻との出会いを忘れられない思い出として子供達に解説するシーン。秀悦作のパワフルな場面ばかりだ。

まあそう述べたものの、この映画には多くのでこぼこ感もあった。動物園で起こる問題も、家族問題も、見ていておもしろかったり興味深かったりするがまとまり感がまるでなかった。
まるで編集時において肝心なシーンが多くカットされているようだ。
無駄なくそして流れにスムーズにのっているのが劇中の挿入歌であり音楽だ。どの曲もシーンにピッタリでムードを盛り上げる。
助演俳優達は演技がうまいにも関わらず出番があまりなかった。
アンガス・マクファーデン、トーマス・ヘイデン・チャーチ、J・B・スムーヴ、そして他の動物園スタッフが心あたたまる映画に仕上がるのに貢献している。
ただ、息子とリリィ(エル・ファニング)との関係はうまく表現しきれていない。

様々なエレメントが欠けていても映画がいい時がある。
観客が登場人物に感情移入できるかどうかが鍵なのだ。食い込めるキャラクターがいれば映画はやはりおもしろい。
観客達のロージーへの反応を見て、感じて、私なら彼女のシーンを増やしていたとつくづく思った。

いい映画だ。観に行く価値がある。

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