子供に見せていいか迷っている時の参考: 『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』

☞SPOILER ALERT ネタバレを含みます SPOILER ALERT☜
 
外国映画、洋画を観る時にいつも考えてしまうのが「この映画を小学生の子供と一緒に観てもいいのだろうか?」という事です。

小学生の低学年、中学年、高学年という分け方もありますが、年齢という型にはめられない違いもあります。
子供たちそれぞれの感じ方、捉え方、理解の仕方は年齢という枠組みを超える時があるのです。
持って生まれたもの、育った環境、様々な経験によっても異なるでしょう。
三者三様、十人十色、千差万別。
最後は、その子供をよく知る大人が判断する事です。
何れにせよ、子供と一緒に素敵な映画時間がシェアできる事を願っています。

今回の映画は『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』 (原題:Life of Pi)。
中学生以上向けの小説が原作の映画ですが、アメリカではPGレイティングがついています。
アメリカの映画協会では「感情的になりやすい内容がある」「海上事故・海難の恐ろしい場面がある」事をふまえて「大人の指導のもと」観たらいいと判断されたという意味合いです。

教育熱心なバラク・オバマ大統領が、14歳と11歳の娘たちに自ら読んで聞かせた本が原作の映画と友人から聞いていたので、マークしていた作品。
フランスで富裕層にかかる所得税に抗議しベルギーに移住、その後プーチン大統領のおかげでロシア国籍を取得した俳優ジェラール・ドパルデューがどんな役で出演しているのかにも興味がありました。

インドの動物園を経営する家族のもと育った少年パイの乗った船が沈没、一人だけ生き残り危険なベンガルトラと救命(ライフ)ボートで太平洋を漂流、虎を生かすことが自分を生かすことと受け止め共存していくとういう話は、子供も退屈してしまうのではないだろうかとセカンドゲスしてしまい、観に行くのはやめるつもりだったのです。
ところがある日、トレーラー予告編を観て映像に感嘆した子供がこの映画を観たいと言い出し、結局劇場に行く事になりました。

 


 

結論(conclusion)

見せてよかったです。

☞SPOILER ALERT しつこいようですが再びコーション SPOILER ALERT☜
子供と一緒に観ていい映画かを決めるための参考コラムとはいえ、最後のどんでん返しが宣伝されている映画ですので、エンディングまで驚いていたい親御さんは読むのを控えた方がいいかもしれません。


退屈してしまうかと思ったら大間違いでした。
少年時代のストーリーは、エキゾチックな動物園、風変わりなおじさん、名前に対するからかい・いじめからの脱出、動物の本能、ヒンズー教、キリスト教、イスラム教といった宗教との出会いなど次から次へと興味深いエピソードが続きます。

そして海へ。
船内でのシーンは後に語られる重要なキャラクターの登場がキーとなります。
壮大なるオーシャンでのアドベンチャーというには厳しすぎるサバイバルと幻想性を帯びた神秘的で美しいイメージのハーモニー。
様々な海をオレンジ、青など鮮やかに彩り、波の大きさを変え、出現する海の生物の持ち味を生かし、デジタルテクノロジーを駆使して表現していますが、感じ方は子供の受け止めようで変わってもきます。
トラのリチャード・パーカーが本物かCGか見分けがつきませんが、それは子供には関係ないでしょう。

解せない貨物船遭難の調査に訪れた日本の調査員たちが傷つきベッドに横たわるパイに詰め寄るシーンがあります。
日本人がこの映画でもあまりいい役回りをしていない事へのフォローも必要かもしれません。
調査員たちがパイの話を信じないため(無理もないとうなずく方もいらっしゃるでしょう)、パイはもうひとつ他の話をし始めます。
動物たちが出てこない、生き残ったのは人間だけという話。
貨物船が転覆した後、けがをした水夫(けがをしたシマウマ)、パイの母(シマウマをかばおうとしハイエナに立ち向かったオラウータン)、意地悪なシェフ(シマウマやオラウータンを次々に襲ったハイエナ)、そしてパイ(トラのリチャード・パーカー)が漂流し、いかにパイのみ残ったかといういきさつ。
ここでの告白について子供に質問される可能性のある親御さんは答え方を考えておく必要があるかもしれません。

パイは尋ねます「どちらの話がお好みですか?」
調査員がどちらを選ぶのか、パイの話を聞きにネタ探しにカナダまでやってきた小説家がどちらを信じるのか、観客(読者)自身どちらの話を好むのかが議論されることでしょう。
けれど、子供にとってそれはどちらでもいい事です。
神とか宗教とかスピリチュアリティとかを追求し話し合い論争に興じる事は大人に任せましょう。
こどもには子供の目線で何かを感じてもらえることができれば、私たち親がその視界を広げる手助けができれば、それだけですばらしいと思いませんか?
子供に理解できるかを心配しすぎていては、感受性を育てる妨げになってしまいかねません。
この作品はそれをいろいろな形で提供してくれます。

リチャード・パーカーの名前の由来そしてその名の持つ意味、パイの家族がインドを離れカナダを目指さなければならなかった歴史、それぞれの宗教における逸話の象徴、すべてにおいての神の存在について子供たちが興味を持つ日が来れば、それはそれで楽しみな事です。

ブッカー賞を受賞した原作本を読みたくなった方は、小説の方は映画以上に生々しくグロさもあり、リアリティがあふれすぎる表現が多々ある事を知っておいてください。
ちなみにこの物語は実話ではありません。フィクションです。

映画を見終わった後「楽しかったね」「おもしろかったね」「よかったね」「勉強になったね」と言える事、映画を観てしばらく経った後もその映画の話題で会話が盛り上がる事を評価の糧としています。

いくつかのポインターを箇条書きにして書き留めます。
参考にしてください。

【注意事項】

暴力・ヴァイオレンス(violence)

シマウマがハイエナに襲われる
オラウータンがハイエナに襲われる
ハイエナがトラに襲われる

恐怖感(terror, horror)などのネガティブな感情

パイがおじさんにプールに投げ込まれる
パイがみんなにからかわれる(いじめを想像)
パイにトラの獰猛さを教えるために父親が目の前でヤギを食べさせるシーンが想像される(実際には見られない)
家族と一緒に乗っていた貨物船の沈没(東日本大地震で津波の恐怖を味わった人にはトラウマを呼び起こす引き金になりかねない)
愛する両親、兄を亡くす事
愛する人たちを助けられなかったと自分を責めてしまう辛さ
ハイエナに襲われ食べられるのではないかというパイ自身の心配
トラに襲われ食べられるのではないかというパイ自身の心配
人食い島
トラへのやるせなさ
人肉食もしくはカニバリズム

流血(gore)

動物が襲われる所でたくさんではないが少量見られる

性・ヌード(sex, nudity)

パイは海上を半裸で過ごしている

麻薬・ドラッグ(drug)

N/A

喫煙(smoking)

N/A

飲酒(drinking)

N/A

【その他考慮したい事】

3D(three-dimensional)

2Dでも素晴らしさは味わえる

その他の視覚効果

海で漂流中でのシーンのいくつかが蛍光色のような光を帯びている

上映時間(running time)

2時間以上の映画なのでトイレには直前に行っておいて正解

【良点】

学び得るもの(lesson learned)

いじめに対してどう立ち向かうかの一方法
好奇心
宗教への興味
動物、生物への興味
何でも学ぼうとする意気込み
美への感謝
家族愛
勇気
機知
サバイバル精神
あきらめない、不屈の精神
アドベンチャー・冒険の心

楽しい事、おもしろい事(fun, joy)

たくさん!

レイティング
【日本】G
【米国】PG
 

 

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