トイ・ストーリー3(原題:Toy Story 3)レビュー(評論、批評、見解、感想)

トイ・ストーリー3(原題:Toy Story 3)

 
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© Disney/Pixar. All rights reserved.

ピクサー(親会社はディズニー)の新作「トイ・ストーリー3」が、今日日本で公開され、1999年作品「トイ.ストーリー2」で語られた、おもちゃにとって辛い現実 − 持ち主であるこどもの成長 − を目の当たりにすることになった.

続き物を出して失敗することが多い映画界において「トイ・ストーリー(原題:Toy Story )」の続編「トイ・ストーリー2」は大人気の前作をも上回る素晴らしい出来であった. その「トイ・ストーリー」三部作の最終章ともいえる今回の作品「トイ・ストーリー3」にかける期待は、ファンのこども達を含め大人達の間でも大きかった.

おもちゃの視点で描かれたCGアニメーション映画は、列車強盗が出る壮大な西部劇を思わせるシーンから始まる. 持ち主アンディの想像力で、様々な設定の中を生きられるおもちゃ達の活き活きしていること. そんな事を考えて間もなく現実が押し寄せてくる. こどもだったアンディは大学進学のため家を出る準備をしているのだ.

手違いと不幸な偶然が重なってゴミに出されてしまったおもちゃ達.何とか逃げ出すが、アンディに捨てられたと思い込んだおもちゃ達は自ら保育所に寄付される箱に飛び込む.
誤解を解こうとサニーサイド保育所に付いてきたウッディ(声:トム・ハンクス)だったが、傷ついた仲間を説得することに失敗.こども達に遊んでもらえることを期待し保育所に留まることを選んだバズ(声:ティム・アレン)やジェシー(声:ジョーン・キューザック)などのおもちゃ仲間達と別れることになってしまう.

次々に進むストーリーは、良い脚本のおかげだが、編集のうまさはいうまでもない. 背景やキャラクターを観たら、手描きアニメーションのファンでも、このCGアニメーションの設計、色彩、照明など技術面の美しさに敬意を払うだろう. この映画のスタッフは、その素晴らしい色合いと光の加減を使い、サニーサイド保育所を時によりいかにもおもちゃの刑務所のように仕立て上げ、危険にさらされた仲間達を救出したウッディを先頭にした脱獄映画のスリル感を出すのに成功している.

慣れ親しんだおもちゃ達を今ひとたび観られることによろこびを感じながらも,今ひとつすっきりせず物足りない気がする.1995年以来、その映像よりストーリーの良さを評価されてきたピクサーの映画. 11作目にあたるこの作品で初めて安易さを感じる.

© Disney/Pixar. All rights reserved.

この映画は 前二作より暗く、意外な敵役の卑怯さ、恐怖感にかられる緊迫したシーンなど、こどもは勿論大人の観客でも早く終わって欲しいと願ってやまない所がある.
しかし、バランスをとるようにこれまでもユーモアの多いピクサー作品は笑いを各所に潜ませているから救われる.中でも、出るたびに笑わせてくれる新しいキャラクター、ケン(声:マイケル・キートン)は、彼が主人公の短編映画ができてもおかしくないほどの存在.

そういった存在感がなかったアンディは最後に近しいシーンで、ありったけの憶いを表情に表す.彼の言葉「みんな、ありがとう!」より、幼さが少しだけ残っているその顔で表した気持ちで、おもちゃ達の想いが通じていたことがわかる.
自分が「こどもだったこと」を、「こどもだったとき」を、思い出しながら泣いてしまうのもいいだろう. 自分が大事にしていたおもちゃ達は今どこでどうしているのかを想像したり、時の流れをゆっくり想いながらこの映画の最後を自分なりに飾ることをお勧めする.

アメリカには今、ピクサーをはじめ長編映画アニメーション作品を送り出す会社がいくつもでき、素晴らしい作品を相次いで上映している.「トイ・ストーリー3」は、アメリカ公開日一日で$41,000,000以上の利益を出したとリポートされた.日本の映画業界や財界も、スタジオジブリのように質の高いアニメーション作品を出す会社が次々と設立できるよう助成すべき時なのではないだろうか.

注意書
こども向けの映画でありながら、小さいこども達には怖いシーンがあるので(おしゃべり電話が、どうしてみんな逃げ出せないかをウッディに説明する時に観られる保育所の設定、ゴミ処理場でおもちゃ達に危機が迫る時など)、気をつけてあげてください.

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