ヒックとドラゴン(原題:How to Train Your Dragon)のサントラ

イギリス出身のジョン・パウエル(John Powell)は子供の頃から音楽を習い、初めはコマーシャルの作曲に携わっていた.

『ヒックとドラゴン』(原題:How to Train Your Dragon)のサウンドトラックも含め、『チキン・ラン』(Chicken Run)、『シュレック』(Shrek)、『ロボッツ』(ROBOTS)、『アイス・エイジ2』(Ice Age: The Meltdown)、『ハッピー フィート』(Happy Feet)、『カンフー・パンダ』(Kung Fu Panda)等数々の素晴らしいアニメーション映画音楽に携わっている.
しかし彼の担当するサウンドトラックはアニメーションだけではない.
『ラットレース』(Rat Race)、『ボーン・アイデンティティー』(The Bourne Identity)、『ペイチェック 消された記憶』(Paycheck)、『ミニミニ大作戦』(原題:The Italian Job )、『ボーン・スプレマシー』(The Bourne Supremacy)、『Mr.&Mrs. スミス』(Mr. & Mrs. Smith)、『ハンコック』(Hancock)、『グリーン・ゾーン』(Green Zone)、『ナイト&デイ』(原題: Knight and Day)など、毎年確実に忙しい作曲家である.アカデミー賞やグラミー賞を初め様々な賞にノミーネートされているが、アニメーション映画音楽のアニー賞を多々受賞している.

ハンス・ジマー(Hans Florian Zimmer)や、ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ(Harry Gregson-Williams)との共同作が多かったジョン・パウエルだが、共同で制作しても、ソロで創作しても秀逸のサントラを作り上げられる作曲家のひとりである.

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バイキングを意識したのか、北欧に近いケルト調(アイルランド、スコットランド,ウェールズ、コーンウォル)にアレンジした音楽が多い.本物のヴァイキング音楽とどれ程近しいかの批判は別として(スカンディナヴィアのヴァイキングはブリテン諸島各地に移住または越冬地として滞在していた事もあるので、ケルト調でもよしとすべきかもしれない)、彼特有の力強いオーケストラがいつもより新鮮に感じられその気になれるのだから聴き応えがある.
どの曲を聴いても楽しめるが、特に バーク島(This Is Berk)− テスト飛行(Test Drive)の曲がこれに似通っている − がもっと聴いていたくなる程の完成度の高いものになっている.
撃ち落とされたドラゴン(The Downed Dragon)には深い感情さえあり、怪我していたドラゴン(Wounded)などに聴かれるコーラスの美しさも耳にうれしい.
許されざる友情(Forbidden Friendship)は違った曲作りでかえって気を引き、ヒックとトゥースの心が通い合い友情へと変化する大切な映画音楽の秀作.
新しい尾ビレ(New Tail)と、また明日(See You Tomorrow)のテンポも映画のシーンに合ってちょうどいい.
ロマンティックな飛行(Romantic Flight)は、トゥースの背に乗って飛行しながらアスティの気持ちが次第に動いていく事を描写した美しい一曲.ゆっくりと味わって聴いてほしい.

スティック&ストーン(Sticks & Stones)は、最後にエンド・クレジットと共に流れる挿入歌で、アイスランド(ヴァイキングが移住した国)出身のロックグループ、シガー・ロス(Sigur Rós)のギターとヴォーカルを担当するヨンシー・ビルギッソン(Jón “Jónsi” Þór Birgisson)によるものである.新たなる未来に希望ををたくさん含めた明るい歌に仕上がっている.

Jonsi’s “Sticks and Stones” Music Video

 
ヒックとドラゴンのサントラは、映画とともに堪能できる素晴らしい作品と言えるが、ノルウェー、スウェーデン、デンマークに渡る本物のヴァイキングの音楽を聴きたかった.せっかくこの三国にヴァイキングの音楽家たちがたくさんいるのだから、ヒックとドラゴンの第二作目で彼らを起用することを期待しよう.
 

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