インセプション(原題:Inception)の レビュー(評論、批評、見解、感想)

インセプション(原題:Inception)


[PR] インセプション Blu-ray & DVDセット (初回限定生産)

© 2010 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

この夏、一番期待されていると言っても過言ではない「インセプション」が今日、アメリカで公開された.
「メメント」で一躍脚光を浴び、「ダークナイト」でその名をゆるぎないものにした映画監督クリストファー・ノーランが、何年もあたため続けてきたアイデアによる自身のオリジナル作品である.

大きな波が行ったり来たりするシーンからこの映画は始まる.
海辺に倒れているひとりの若い男ドム・コブ(レオナルド・ディカプリオ).所持品は一丁の拳銃とコマだけ.それを見て、年老いたサイトー氏(渡辺謙)が謎めいた言葉をつぶやく.

何が起こっていたのか考える間もない.テンポの速さに驚いている間もない(渡辺謙の不自然なメークに気がつくだけの時間はある).

日本風の部屋でコブ、彼の同僚アーサー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)、若き日のサイトー氏が商談をしている、それと交差するように現れるシーンでは、コブ、アーサー、そしてサイトー氏が、異国の部屋で眠っている状態なのだ.こちらが現実なのかと困惑していると、実は両方とも違う事がわかる.

コブとアーサーは、人の潜在意識(夢)の中に入り込み、アイデアや秘密を盗み出す企業スパイ.
サイトー氏がターゲットだった仕事に失敗した二人は日本を脱出する間際に、そのサイトー氏自身から仕事を依頼される.それは、インセプションと呼ばれるもので、アイデア、秘密を盗むのではなく、反対に考えを植え付けるという難度の高く不可能といわれている仕事なのだ.
サイトー氏は、国際指名手配犯となっているコブが愛する子供達のもとへ帰れるよう段取りをつけると約束する.

この手の映画の典型通り、最後の一仕事を実現するためにコブは選りすぐったチームを結成、妖艶な女性(コブの妻)の陰を常に感じながら、計画を進めていく.

© 2010 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

本をゆっくり閉じるように巴里の街が折れていくシーン、いきなり出てくる乗り物、ペンローズの階段又は、エッシャーのリトグラフ「上昇と下降(Ascending and Descending)」、宙に浮いたままの格闘など、視覚的に楽しく素晴らしいものが後を絶たない.その上、予測していなかった展開に絶えず胸がはずむ.

家へ帰りたい、子供達のもとへ帰りたい、その一方で最愛の妻を見捨てられない、そんなコブの悲痛な想いをディカプリオが好演.クールさを自然に演ずるゴードン=レヴィット、シリアスな映画の中でただ一人笑わせてくれるトム・ハーディ、父の愛を欲してやまない繊細さを無理なく出すキリアン・マーフィーといった俳優陣の配役は正解だが、片や、憂いさや深みが足らないマリオン・コティヤール、他の映画と変わらない一本調子のエレン・ペイジはミスキャスト.

何がなんだかわからなくてひと息つきたくなったり(つい、巻き戻して再生ボタンを押したくなる)、ルールの説明がやや重苦しくて疲れたり、 終局部分で、第一段階の夢、第二段階の夢、第三段階の夢,その上第四段階の夢といった各々のシーンの交錯がありすぎたり、時間の経過の仕方に違和感がある所もあるが、2000年作品「メメント(原題:Memento)」と同じく、何度と繰り返し観たくなる映画である.
最終シーンを観て、「あっ」、と驚いたとしても,「やっぱり」、と納得したとしても、時間を無駄にしたと思う観客は少ないだろう.

関連記事

インセプション(原題:Inception) の あらすじ、ストーリー(Plot Summary、Synopsis) を読む