アイ・アム・ナンバー4 (原題:I Am Number Four) のレビュー(評論、批評、見解、感想)

アイ・アム・ナンバー4 (原題:I Am Number Four)

この映画は、十代の若者に人気のある小説が原作、孤立する女学生のヒロイン、ハンサムなイギリス人男優演ずる、謎めいた(普通の人間ではない)ヒーロー、という点において、大ヒット作『トワイライト』と比較されることが多い.
しかし、アクションを多く取り入れた SF (Sci-Fi)ファンタジー映画とロマンス映画を比べるのは間違っている.
確かに、映画好きなら『トワイライト』の他に『スーパーマン』『スパイダーマン』『トランスフォーマー』などを、海外ドラマ好きなら『Xファイル』『FRINGE』『バフィー 〜恋する十字架〜』などを思い出し、見慣れたシーン、使い古された設定、オリジナル性の欠けている事にがっかりしてしまうかもしれない.
先ほど公開されたJ・J・エイブラムスの映画『スーパーエイト』と違い、これはオマージュ作品ではないから、他の作品と似ている所が多すぎる、と原作共々非難されるのも仕方がないかもしれない。
SF (Sci-Fi)のジャンルが好きなファンは目が肥えているし、 常に斬新なアイディアを求めている.
登場人物の顔がよくても、シナリオがよくなければ始まらない.
あらすじが興味をそそるだけに残念だ.

© DreamWorks II Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.

モガドリアンに攻撃された惑星ロリアン.その星から逃れた不思議な力(レガシー)を持つ9人のこどもたちと、彼らを守る9人の戦士(守り人、保護者の役目)たち.それぞれ地球各地に散らばり、こどもたちが成長しレガシーに目覚めるのを待っていた.
(9人と言えば、『サイボーグ009』があったことを思い出す.あれは名作だ).

貧乏くじを引いたのか(どう番号順を決めているかは明かされていない)ナンバー1になってしまったこどもは9才の時、ナンバー2は12才の時に抹殺され、ナンバー3の番になったところで映画は始まる.
日本でも『ビーファイター』『パワーレンジャー』『KAMEN RIDER』もので知られているルーベン・ラングダンがナンバー3のガーディアンとして登場し、数秒でいなくなる.ファンは見逃さないよう暗闇に目を見張ってほしい.
ガーディアンを失い、すぐさま機敏にアフリカのジャングルをひとり逃げ回るナンバー3.しかしモガドリアンの追っ手が迫る.
幼さが残るグレッグ・タウンリー演ずるナンバー3を短剣で刺し殺すなど趣味が悪すぎる.ここで嫌な気分になってしまう.こどもが殺される映画は観たくなかった、と後悔して首を振ると、ほかの観客がこどもの目を覆い隠していた.
そして映画の下り坂はつづくばかり.
たとえ原作が取るに足らなくても、三人もプロの脚本家が関わっていてこれでは悲しすぎる.
続編で説明を用意していると言い訳しても、話のつじつまが合わな過ぎる(ここに矛盾や質問を書き始めるときりがないのでやめておく).観ていてもどかしい.まとまりのないストーリーの運びに退屈し、わがままな主役にあきれる.
非常時に学校の暗室で写真の現像をするにいたっては、メインの二人に怒りを通り越して、情けなくなってしまう.

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ストーリーラインばかりか、台詞も陳腐すぎて、これではいい役者も演じようがない.
キャラクターに深みがないため『ダイ・ハード4.0』のティモシー・オリファントが彼の魅力を発揮できず、『3時10分、決断のとき』のケヴィン・デュランドが彼の醍醐味を見せられないでいる.
彼らのような俳優が無理なら、きれいなだけのアレックス・ペティファーは救われない.
幼い頃から命を狙われ、流浪の民と化した宇宙人が中途半端な描写をされている上に、ペティファーがより薄っぺらい物にしている.
5年前のアレックス・ライダー(Stombreaker)の時の方がまだうまかった(シリーズ化されると思われたが、結局されずに一作で終わり).
映画の中だけではなく私生活でもカップルであったペティファーとダイアナ・アグロンだが、『スーパーエイト』のカップル、ジョエル・コートニーとエル・ファニングに完全に負けている.

唯一のびのびと、セクシーにアクションをこなしているのが黒皮のスーツを着こなしたテレサ・パルマー.出番が少なかった彼女が、レガシーを使って活躍する最終シーンだけが楽しめる.しかし彼女の台詞もひどくてかわいそうになってくる.
どうせ観るなら『アイ・アム・ナンバー4』ではなく 『アイ・アム・ナンバー6』の映画を観たかった.パルマーが、ナンバー6の活躍を望んで続編を期待するのも無理ない.

アレックス・ペティファーや人気テレビ番組『glee/グリー 踊る♪合唱部!?』のダイアナ・アグロンのファンで、このふたりの顔が見られるだけで良いという人のみ楽しめる、SF (Sci-Fi)ファンには取るに足らない時間の無駄ともいえる作品となった.
原作の本は第二作目がこの夏発売されるが、映画に至っては、続編の話はまだ出ていない.
『ケロロ軍曹』の日向秋と相談してもらって、ストーリーを立て直してからシリーズ化するか検討してほしい.

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